ブログAX(AIトランスフォーメーション)とは?DXとの違い・事例を解説

AX(AIトランスフォーメーション)とは?DXとの違い・事例を解説

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AX(AIトランスフォーメーション)は、AIの活用を前提に業務プロセスやビジネスモデル、組織文化を根本から変革する取り組みであり、単なる効率化を超え、生産性と競争力の向上も目指します。

5Gやクラウドなどの通信やデジタル技術が進歩した当時には、DX(デジタルトランスフォーメーション)が企業の取り組みテーマとなっていましたが、現在ではDXに代わりAXに注目が集まっています。

本記事では、AXとは何かという基本から、DXとの違い、メリットと課題、成功させるための5ステップを紹介します。また、ツールや具体的な企業事例もあわせてわかりやすく解説します。

自社のAX推進を一歩前へ進める実践的な指針として、ぜひ参考にしてください。

目次

AX(AIトランスフォーメーション)とは?定義や範囲

AXとは、AI Transformation(AIトランスフォーメーション)の略で、AIの活用を前提に業務やビジネスモデル、組織のあり方そのものを変革していく取り組みを指します。単に既存の作業へAIを足すのではなく、AIにできることを起点に仕事の進め方を組み替える点に本質があります。

AIによる変革という考え方を早くから体系化したのが、AI研究の第一人者であるアンドリュー・ング氏です。同氏はGoogle Brainの立ち上げやBaiduのチーフサイエンティストを務めた人物で、2018年には企業がAIで変革を進めるための指針として「AI Transformation Playbook(AIトランスフォーメーション・プレイブック)」を公開しました。

パイロットプロジェクトから始めて社内に人材を育て、全社へ広げるという段階的な進め方は、現在のAX推進にも受け継がれています。

日本でAXという略語が広まったのは、ChatGPTをはじめとする生成AIが急速に普及した2023年ごろからです。デジタル化を意味するDXになぞらえ、AIによる変革を表す言葉として、コンサルティング会社やIT企業がDXの次のテーマに位置づけて使い始めました。

これまで人にしかできなかった業務までAIが担えるようになったことが、その背景にあります。

AIトランスフォーメーションが指す「変革」の範囲

AXが指す変革の範囲は、特定の作業の自動化にとどまらず、いくつもの段階にわたって広がっていきます。最も小さな単位は個人です。文章作成や情報収集といった日々の業務をAIが補助し、一人ひとりの働き方や、考えを整理して判断するプロセスそのものが変わります。

次に広がるのが、複数の工程をまたぐ業務プロセス、すなわちオペレーションの領域です。人とAIの分担を前提に、業務の流れ全体を設計し直します。

範囲はさらに、企業全体へと及びます。組織のあり方や経営の意思決定、ビジネスモデルそのものをAIを前提に組み替える段階です。そして最も大きな範囲が、市場や社会のレベルです。AIを活かした新しい顧客体験の提供や、社会インフラの変革にまで影響は広がっていきます。

このようにAXは、個人の働き方から社会全体までを貫く幅広い概念です。どの範囲から着手し、どこまで広げるかという見取り図を持つことが出発点になります。

AXとDXの違い

AXとDXの違いは、変革の中心となる手段と、その目的にあります。どちらも企業をより良く変えるための取り組みであり、主導するのはあくまで人間です。違うのは、何を使って、何を目指すのかという点です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、紙やアナログだった業務をデジタルデータやシステムに置き換え、業務の効率化やビジネスモデルの変革を進める取り組みです。ここで中心となる手段はITシステムやクラウドであり、人が行う作業を速く正確に処理することを目指します。

一方でAXは、生成AIや大規模言語モデル(LLM)、AIエージェントといったAIを中心の手段とします。

AXが目指すのは、これまで人にしかできなかった判断をAIが代わりに行ったり、一連の業務を自律的に進めたりすることです。文章作成や意思決定といった知的業務そのものを変革していきます。

ここでも人とAIは対立せず、人が方針を定めてAIに任せ、最終的な見極めを人が担うという協働の形をとります。

AXは、DXを否定するものでも、まったく別の取り組みでもありません。生成AIの時代に合わせてDXが進化した先にあるのがAXです。

DXによってデータやインフラがデジタル化されると、そのデータをAIが学習できるようになり、より高度な変革が可能になります。つまりDXはAXの土台であり、DXの先にAXがあるという関係です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)AX(AIトランスフォーメーション)
中心となる手段ITシステム・クラウドなどのデジタル技術生成AI・LLM・AIエージェント
主な目的業務・データのデジタル化と効率化AIによる判断の代替・自律化と知的業務の変革
対象となる業務主に定型業務のデジタル化判断や文章作成を含む知的業務(非定型業務)
両者の関係AXの土台。データとインフラをデジタル化するDXの先にある進化。デジタル化したデータをAIが学習する
主導する主体人間(ITは作業の道具)人間(AIは判断・作業を代替する担い手)

AXが注目される背景

AXがこれほど注目されるようになったのは、AIの爆発的な進化といっても過言ではありません。

生成AIやAIエージェントが急速に発展し、AI自身が状況に応じて判断し、行動できるようになりました。これまで人間にしかできなかった高度な判断業務までAIが担えるようになり、企業の関心を一気に高めています。

同時に、人を増やして業務を回すという従来のやり方が、物理的に成り立たなくなってきました。働き手が限られるなかでは、人手をかけて量で対応する方法には限界があります。

だからこそ、貴重な人的リソースを創造的なコア業務へ集中させ、それ以外をAIに任せるといった業務変革が、AXを後押ししています。

他にも、市場の変化が激しさを増していることも、見逃せない要因です。生成AIやAIエージェントを使いこなす競合他社が増え、製品やサービスだけでなく、ビジネスモデルそのものが急速に塗り替えられています。

こうした競争に対抗し、変化の波に乗るためにも、AXの推進が欠かせません。

もちろん、その根本には以前から指摘されてきた日本の労働力不足があります。しかし今のAXの広がりを生んでいるのは、それ以上にテクノロジーの急激な進化だといえます。

人手不足という長年の課題に、AIの進化が解決の道筋を示したことで、AXは一気に現実的な選択肢となりました。

AXに取り組むメリット

AXに取り組むことで得られる効果は、目先の効率化にとどまりません。ここでは、コスト面の効果から組織に蓄えた知の活用、競争力の強化まで、AXがもたらす代表的なメリットを6つ紹介します。

人手不足の解消や労働環境の改善

1つ目のメリットは、人手不足の解消と労働環境の改善です。

AIを活用すれば、24時間休まず働く有能なデジタル社員を何人も雇うのと同じ効果が得られます。それにより、メール対応や見積作成、顧客への一次回答といったルーティンワーク、深夜や休日の定型対応からも人が解放されます。

その結果、従業員は本来やるべき仕事に時間を割けるようになり、モチベーションの向上や働きがいの改善にもつながります。

コスト削減と生産性の向上

2つ目は、コスト削減と生産性の向上です。

AIは人為的なミス(ヒューマンエラー)を減らし、手戻りやそれに伴う残業代・人件費を大幅に削減します。また、カスタマーサポートなどをAIが24時間365日カバーすれば、運用コストも抑えられます。

さらに、資料の要約や市場動向の分析、プログラムのコード記述といった作業を、AIは数秒から数分で処理します。人が数時間かけていた仕事が一瞬で終わり、生産性は大きく高まります。

データドリブンへの転換

3つ目は、データドリブンへの転換です。

これまでのDXでは、データを蓄積するだけで終わりがちでしたが、AIを使えば売上や顧客の声、日報、財務情報といった社内の膨大なデータをリアルタイムに分析し、活用できます。

また、過去の傾向を把握するだけでなく、高精度な予測も可能です。経験や勘に頼るのではなく、客観的なデータの裏付けをもとに意思決定できるようにもなります。

暗黙知の資産化

4つ目は、暗黙知の資産化です。

これまで特定のベテラン社員だけが持っていた勘やコツ、ノウハウといった暗黙知も、AIとの対話や過去の商談ログ・業務履歴の解析を通じて、言語化し形式知として残せます。

そうすれば、ベテランが退職や異動でいなくなっても、そのノウハウは会社の共有資産として残り続けます。

属人化の解消およびスキルの平準化

5つ目は、属人化の解消とスキルの平準化です。

AIが業務プロセスを標準化することで、Aさんが休むと業務が止まるといった属人化のリスクを解消できます。

新入社員や未経験者であっても、社内のAIに質問すれば、ベテラン社員と同等の質の回答やアウトプットを瞬時に得られるようになります。

イノベーションの高速化

6つ目は、イノベーションの高速化です。

人力なら数日から数週間かかる新商品のアイデア出しやデザイン案の作成といった作業も、AIを使えば1日に何百パターンも生み出せます。

また、数ヶ月から数年を要していた研究開発や新規事業の立ち上げも、AIでシミュレーションや自動化を行うことで、数週間から数日に短縮できます。時間的な制約がなくなりトライ&エラーを重ねやすくなることで、イノベーションが次々と生まれるようにもなります。

AX推進の課題・デメリットと注意点

AXには大きな可能性がある一方で、導入前に理解しておくべきリスクや課題も存在します。ここでは、安全に成果へつなげるために押さえておきたいAXの課題やデメリットを5つ紹介します。

情報漏えいやハルシネーションのリスク

1つ目の課題は、情報漏えいとハルシネーションのリスクです。

生成AIに社外秘の情報や個人情報を入力すると、そのデータがAIの再学習に使われ、まったく別の他社への回答として出力されてしまうリスクがあります。

また、AIは事実と異なる誤情報を、もっともらしく自然に出力することがあります。これをハルシネーションと呼び、特に最新の情報やニッチな分野で起こりがちです。

AIに任せきりにすると、間違った内容のメールを顧客へ自動送信してしまったり、不正確なデータをもとに経営判断を下してしまったりと、致命的なトラブルにつながりかねません。

著作権や知的財産権を侵害する可能性

2つ目は、著作権や知的財産権を侵害する可能性です。

AIが裏側で学習している他者の著作物(画像や文章、プログラムコードなど)に酷似した成果物が、そのまま出力されることがあります。これに気づかず自社のビジネスで使ってしまうと、著作権侵害や知的財産権のトラブルに発展しかねません。

こうしたリスクを避けるには、利用するAIモデルの規約や、著作権法、とりわけAIが生成したデータの商用利用に関するルールを常に把握しておく必要があります。そのうえで、社内のガイドラインを厳格に整備することが欠かせません。

専門人材の不足

3つ目は、専門人材の不足です。

AXの人材を考えるうえで重要なのは、AIを使える人と、AIで変革できる人には大きな差があるという点です。単にAIチャットへ指示を出せる人ではなく、自社のビジネスモデルにどうAIを組み込むかという戦略を描ける人材が必要になります。

こうしたAXアーキテクトやデータサイエンティストと呼ばれる人材は、市場で圧倒的に不足しています。だからといって外部のコンサルタントに頼りきると、AIのカスタマイズやトラブル対応を自社で行えなくなります。結果として、コストが高騰し続ける悪循環、いわゆるベンダーロックインに陥りやすくなります。

論理的思考力や専門スキルの低下

4つ目は、論理的思考力や専門スキルの低下です。

AIが数秒で高品質な企画書やコードを出してくれるため、若手社員や現場メンバーが、自分で悩み論理的に考えるプロセスをスキップしてしまいがちです。その積み重ねで、本質的なビジネススキルや専門性が育たなくなる恐れがあります。

さらに、AIが出した答えの理由を人間が理解しないまま受け入れていると、いざトラブルが起きたときに、どこが間違っていたのかを検証し、修正することができなくなります。

データの集約や品質担保に労力やコストがかかる

5つ目は、データの集約や品質担保に労力やコストがかかることです。

AIにどれほど高度な判断をさせようとしても、社内のデータがバラバラのままでは、AIは正しい答えを出せません。

そのため、AXを成功させる前段階として、データのクレンジング、つまり整理と統合に莫大な時間と人手、システム投資が必要になります。そして、この地道な工程で挫折してしまう企業が非常に多いのが実情です。

AXを成功させるための5ステップ

AX導入ステップのフロー図

AXを成果に結びつけるには、思いつきでAIを導入するのではなく、順序立てて進めることが欠かせません。ここでは、AXを推進する5つのステップを紹介します。

ステップ1 現状を把握し目的を明確にする

最初のステップは、現状の業務を把握し、何のためにAXを進めるのかという目的を明確にすることです。

誰がどの作業にどれだけ時間をかけているのかを書き出し、業務の全体像を見える形に整理します。そのうえで、解決したい経営課題や業務課題を起点に、AIをどこに活かすのかを定めます。

ここで目的が曖昧なまま進めると、AIを使うこと自体がゴールになり、成果を測る基準も持てなくなります。AXの成否は、導入するツールではなく、この業務設計の段階でほぼ決まると言っても過言ではありません。

ステップ2 ガイドラインを策定しデータを整理する

次のステップは、AIを安全に使うためのガイドラインを定め、AIが参照するデータを整理することです。

入力してよい情報とそうでない情報の区分、利用してよいツールの範囲、生成物の取り扱いなどをルールとして明文化し、全社で共有します。これにより、情報漏えいや著作権侵害といったリスクを抑えながら、安心してAIを活用できる土台が整います。

あわせて、社内に散らばったデータを集め、形式をそろえて最新の状態に保てるようにします。AIの出力の精度は、参照するデータの質に大きく左右されます。

AI活用に踏み出す前に、ルールとデータという足場を固めておくことで、後の展開が左右されます。

ステップ3 小さく試して実験する(PoC)

3つ目のステップは、対象を絞って小さく試すことです。これをPoC(Proof of Concept=概念実証)と呼びます。

いきなり全社へ展開するのではなく、効果を測りやすく負担の大きい業務を1つ選び、限られた範囲でAIを実際に使ってみます。例えば、問い合わせメールの返信や日報の要約、提案資料の作成といった、日常的で取り組みやすい業務がPoCに向いています。

短い期間で試して結果を確かめ、現場で無理なく運用できるか、期待した効果が出るかを検証します。小さく始めれば、うまくいかなくてもやり直しがきき、投資のリスクを抑えながら学びを積み重ねられます。

ここで得た手応えや課題は、本格展開に向けた判断材料となり、現場の納得感を得ながら取り組みを広げる土台にもなります。

そして、こうした小さな成功体験を現場が積むことには、検証以上の意味があります。AIで仕事が楽になったという手応えが社内に広がると、メンバーのモチベーションが高まり、AX全体の推進も一気に早まります。完璧な仕組みを最初から目指すより、小さな成功を積み重ねて勢いをつける姿勢が大切です。

ステップ4 効果測定と全社への横展開

4つ目のステップは、効果を測定し、成功した取り組みを全社へ広げることです。

PoCで得られた成果を、削減できた作業時間や処理した件数、対応の品質といった指標で具体的に測ります。

ここで成果指標を、売上の何パーセント向上といった大きな数字に置くと、AIの貢献を切り分けにくく、評価に失敗しがちです。まずは従来の業務時間と比べてどれだけ時間を削減できたかを基準にすると、効果を客観的に把握できます。

確かな効果が確認できたら、同じ仕組みを他の部署や業務へ展開していきます。一部の成功を組織全体の成果へ広げるこの段階で、AXは点の取り組みから面の変革へと育ちます。

ステップ5 推進チームの立ち上げと組織への定着および教育

5つ目のステップは、AXを継続的に進める推進チームを立ち上げ、組織に定着させることです。

AXは一度仕組みを作れば終わりではなく、運用しながら業務とAIの役割分担を見直し、改善を重ねていく取り組みです。

そのため、部署をまたいで旗を振る推進チームを置き、現場の声を集めながら改善を続ける体制が欠かせません。あわせて、全社員がAIを正しく理解し使いこなせるよう、教育やルールの周知も継続して行います。

専門人材が足りない場合は、外部の専門家に伴走してもらいながら、社内に知見を残していく方法も有効です。技術の導入で終わらせず、人と組織に根づかせてはじめて、AXは成果を生み続けます。

AX推進におけるよくある失敗と対策

AXは正しく進めれば大きな成果を生みますが、進め方を誤ると投資が無駄に終わってしまいます。ここでは、多くの企業が陥りやすいAX推進の失敗と、その対策を6つ紹介します。

手段の目的化を避ける

1つ目の対策は、手段の目的化を避けることです。

話題のAIツールを導入すること自体が目的になり、どの業務をどう変え、何を成果とするのかが定まらないまま進めてしまうのが、最も多い失敗のパターンです。目的が曖昧なままでは効果を測れず、現場には使うこと自体が新たな負担として残ります。

これを避けるには、解決したい課題を起点に、その達成のためにAIをどう使うのかを必ず先に考えることです。つまり、AIはあくまで目的を実現するための手段にすぎません。

ツールから入るのではなく、業務をどう変えたいのかを先に描くことが重要です。

現場の人間を置き去りにしない

2つ目の対策は、現場の人間を置き去りにしないことです。

経営層が壮大なAX計画を掲げても、実際に業務を担う現場が必要性を理解し納得していなければ、仕組みは使われずに形だけのものになります。大きな計画ほど現場には自分ごととして伝わりにくく、抵抗感も生まれがちです。

これを防ぐには、現場が日々感じている困りごとから出発し、小さな成功体験を一緒に積み上げていくことが有効です。実際に業務が楽になったという実感が、AXを前に進める何よりの推進力になります。

トップダウンの号令だけでなく、現場の声を吸い上げながら進める姿勢が、定着できるかどうかを分けます。

データの「質」を軽視しない

3つ目の対策は、データの質を軽視しないことです。

AIは参照するデータをもとに出力するため、そのデータが古かったり、誤りや重複を含んでいたりすると、出力の質も同じように下がってしまいます。どれほど高性能なAIを使っても、土台となるデータが整っていなければ、期待した成果は得られません。

これを避けるには、AIに使わせるデータを定期的に見直し、最新で正確な状態に保つ仕組みを設けることです。

ここで重要なのは、データのクレンジング、つまり整理や表記の統一に時間とコストをかけることです。さらに、良質なデータを継続して集め続けられる環境を整えることも欠かせません。AIの精度を上げる近道は、より高度なツールを探すことではなく、与えるデータをきれいに整え、保ち続けることにあります。

法規制や規約の変化を追い続ける

4つ目の対策は、法規制やサービス規約の変化を追い続けることです。

AIをめぐる法律やガイドライン、各サービスの利用規約は、技術の進化に合わせて頻繁に見直されています。導入した時点では問題のなかった使い方が、規約の変更によって認められなくなることもあります。

とりわけ著作権や個人情報の扱いは、社会的な関心が高く、ルールが更新されやすい領域です。これに対応するには、最新の動向を定期的に確認する担当や仕組みを設け、自社の利用方法を必要に応じて見直すことが欠かせません。

AIに「完璧」を求めない

5つ目の対策は、AIに完璧を求めないことです。

生成AIは万能ではなく、事実と異なる内容を出力したり、文脈を取り違えたりすることがあります。最初から人手を一切かけずに完全な精度で動くことを期待すると、わずかな誤りで使えないと判断し、せっかくの取り組みが止まってしまいます。

大切なのは、AIを誤りも含めて補助してくれる存在と捉え、人が確認・修正する前提で運用することです。一度で完璧を目指すのではなく、使いながら精度を高め、苦手な部分は人が補うという考え方が現実的です。

「最終確認は人間」のルールを徹底する

6つ目の対策は、最終確認は人間が行うというルールを徹底することです。

AIに作業を任せるほど効率は上がりますが、その出力をそのまま使えば、誤りやリスクも一緒に通してしまいます。とりわけ顧客への発信や、金額・契約に関わる判断など、誤りが許されない場面では、人が必ず確認し承認する仕組みが必要です。

ここで指針になるのが、作業はAIに任せ、判断は人間が担うという役割分担です。どこまでをAIに任せ、どこから人が責任を持つのかを業務ごとに線引きしておけば、効率と安全性を両立できます。

AXを実現するツールやAIエージェント

AXを実現するには、自社の業務に合ったツールを選ぶことが欠かせません。ここでは、AIツールの選び方の考え方と、AX推進に役立つ代表的なAIツール・AIエージェントを紹介します。

業務に合わせたAIツールの選び方

AIツールを選ぶ際にまず押さえたいのは、知名度や機能の多さではなく、自社のどの業務に使うのかという視点です。

文章作成や情報整理が中心なら対話型の生成AIが、複数の手順をまたぐ作業を任せたいならAIエージェントが向いています。社内の文書やデータと連携させたい場合は、既存の業務システムと組み合わせやすいかどうかも重要な判断材料です。

あわせて、入力した情報が学習に使われないかといったセキュリティ面や、料金体系が自社の利用規模に合うかも確認します。

重要なのは、汎用的なツールをそのまま使うのではなく、自社の業務に合わせて設定やルールを育てていく前提で選ぶことです。最初から完璧な1つを探すより、小さく試しながら自社に合うものを見極めるほうが、結果的に失敗の少ない選び方につながります。

AXにおすすめのAIエージェント5選

ここからは、AX推進の現場でよく使われている代表的なAIツールやAIエージェントを5つ紹介します。

ツール(提供元)得意なこと特徴・連携向いている企業
Microsoft 365 Copilot(Microsoft)文書作成・要約、表計算の分析、議事録作成Word・Excel・Outlook・Teamsに統合すでにMicrosoft 365を使う企業/バックオフィス効率化
Google Gemini(Google)大量資料の要約、文章・画像・音声の処理Google Workspace(Gmail・ドキュメント等)と連携Google Workspaceが業務基盤の企業
OpenAI ChatGPT(OpenAI)文章作成・要約、アイデア出し、コード生成無料から試せる/学習させない管理機能つきプランありまず生成AIを試したい企業〜本格利用まで
Dify(LangGenius)自社専用の問い合わせAIや業務自動化の構築ノーコードでChatGPT・Geminiなどを部品に組める自社業務に特化したAIを内製したい企業
Anthropic Claude(Anthropic)長い資料の要約・分析、文書作成、コード生成誤情報を出しにくい安全性配慮/エージェント活用も拡大文章品質や機密情報の信頼性を重視する企業

Microsoft 365 Copilotは、WordやExcel、Outlook、Teamsといった日常的に使うオフィスソフトにAIを組み込んだサービスです。普段の業務画面のなかで、文書の作成や要約、表計算の分析、メールの下書き、会議の議事録作成などをAIに任せられます。すでにMicrosoft 365を導入している企業であれば、使い慣れた環境のまま導入でき、社内のデータとも連携しやすい点が強みです。バックオフィス業務を中心に、日々の作業をまとめて効率化したい企業に向いています。

Google Geminiは、Googleが提供する生成AIで、検索で培った情報処理の強みと、文章・画像・音声など複数の形式を扱えるマルチモーダル性が特徴です。GmailやGoogleドキュメント、スプレッドシートといったGoogle Workspaceと連携し、メールの作成や資料のたたき台づくりを支援します。Google Workspaceを業務基盤にしている企業であれば、既存の環境に無理なく組み込めます。最新の情報を踏まえた回答や、大量の資料の読み込み・要約を得意とする点も、実務で役立ちます。

OpenAI ChatGPTは、OpenAIが提供する対話型の生成AIで、AX推進の入り口として最も広く使われているツールの一つです。文章の作成や要約、アイデア出し、プログラムのコード生成まで幅広く対応し、無料でも試せる手軽さから個人利用が一気に広がりました。企業向けには、入力した情報を学習に使わせない管理機能を備えたプランも用意され、社内のデータを扱う業務でも活用しやすくなっています。まず手元で生成AIの実力を確かめたい段階から本格的な業務利用まで、段階的に使える汎用性の高さが魅力です。

**Dify(ディファイ)**は、プログラミングの専門知識がなくても、AIを使った業務アプリやAIエージェントを構築できるツールです。社内の文書を読み込ませて専用の問い合わせ対応AIを作ったり、複数の手順を組み合わせた処理を自動で実行させたりと、自社の業務に合わせたAIの仕組みを画面の操作で組み立てられます。汎用ツールをそのまま使うのではなく、自社業務に特化したAIを育てたい企業に向いています。ChatGPTやGeminiなど他のAIを部品として組み込める柔軟さもあり、内製でAXの基盤を作りたい場合の有力な選択肢です。

Anthropic Claudeは、Anthropicが提供する生成AIで、長い文章の正確な読み込みと、自然で読みやすい文章の生成に定評があります。大量の資料を踏まえた要約や分析、文書作成を得意とし、誤った情報を出しにくい安全性への配慮も特徴です。コードの生成や業務文書の作成支援にも強く、近年は複数の作業を自律的に進めるエージェント的な使い方も広がっています。文章の品質や、機密性の高い情報を扱う業務での信頼性を重視する企業に向いた選択肢です。

AXの業界別事例

AXは特定の業界だけのものではなく、すでに多くの企業が業務の変革に取り組んでいます。ここでは、製造から金融、物流、医療まで、AXの代表的な活用事例を業界別に5つ紹介します。

トヨタ自動車【製造業】

製造業の事例として、トヨタ自動車の取り組みが挙げられます。

トヨタは世界有数の自動車メーカーであり、長年にわたって生産現場の改善に力を注いできました。近年は、生産ラインにおける部品の検査や品質管理にAIによる画像認識を取り入れ、人の目では見逃しやすい不良の検出や、検査の効率化を進めています。

また、社内向けに生成AIを活用できる環境を整え、設計や事務作業の支援など、幅広い業務での活用を模索しています。長年培ってきた現場の知見とAIを組み合わせ、品質と生産性をさらに高めようとする姿勢は、製造業がAXを進めるうえで参考になります。

三菱UFJ銀行【金融・保険】

金融分野の事例として、三菱UFJ銀行の取り組みがあります。

同行は国内最大級のメガバンクであり、膨大な事務処理と高い正確性が求められる業務を数多く抱えています。近年は生成AIを取り入れ、稟議書や報告書の作成、行内の問い合わせ対応などの効率化に活用しています。これにより、大幅な業務時間の削減が見込まれると公表しています

加えて、金融業ではかねてからAIによる与信審査や不正取引の検知が活用されてきました。正確さと安全性が何より重視される金融の現場でAIの活用が進んでいることは、AXが基幹業務にまで広がりつつあることを示しています。

佐川急便【物流・運送】

物流・運送分野の事例として、佐川急便の取り組みが知られています。

佐川急便は全国規模で宅配サービスを展開する大手運送会社で、日々膨大な数の配送伝票を処理しています。同社は、手書きの伝票をAIが読み取って文字データに変換するAI-OCRと呼ばれる技術を導入し、これまで人手で行っていた入力作業を大幅に自動化しました

これにより、入力にかかっていた時間と人員を削減し、担当者をより付加価値の高い業務へ振り向けられるようになっています。人手不足が深刻な物流業界において、定型作業をAIへ移す取り組みは、業界全体にとって示唆に富む事例です。

国立がん研究センター【医療・ヘルスケア】

医療・ヘルスケア分野の事例として、国立がん研究センターの取り組みがあります。

同センターは、日本のがん研究と治療を牽引する中核的な医療機関です。AIの画像認識技術を活用し、内視鏡検査の映像からがんやその疑いのある病変をリアルタイムで検出し、医師の診断を支援する仕組みの研究開発を進めてきました

経験の差によって生じる見落としを減らし、早期発見の精度を高めることが期待されています。AIが医師の判断を置き換えるのではなく、あくまで支援する役割に徹している点も重要です。専門性の高い医療現場でも、作業はAI、判断は人という分担でAXが進んでいます。

業界を問わない「全社共通」

最後に、業界を問わずどの企業でも取り組める全社共通の活用例を紹介します。

会議の録音から議事録を自動で作成する、提案資料やメールのたたき台をAIに用意させる、社内に散らばった規程やマニュアルからAIが必要な情報を探して答える、といった使い方は、業種や規模を問わず効果が見込めます。

これらは特別な設備投資を必要とせず、日々の定型作業を着実に軽くしてくれるため、AXの最初の一歩として取り組みやすい領域です。大企業の大がかりな事例に身構える必要はありません。

まずは自社の身近な業務のなかから、繰り返しが多く時間のかかる作業を1つ選んでAIに任せてみる。これが、AXを自分ごととして始める現実的な出発点です。

中小企業がAXを始めるには

ここまで見てきたように、AX(AIトランスフォーメーション)は、AIを導入することそのものではなく、AIを前提に業務を設計し直し、運用しながら改善を重ねていく継続的な取り組みです。DXとの違いやメリット、課題、進め方を理解したうえで、自社の業務のどこから変えるかを描くことが出発点になります。

とりわけ中小企業のAI導入は、その多くが業務設計の不十分さによってつまずくと言われています。ツールから入るのではなく、業務をどう変えたいかを先に定め、小さく試しながら自社に合う形へ育てていくことが、成功への近道です。

とはいえ、日々の業務を抱えながら、現状の可視化から目的の設計、PoC、データ整備までを自社だけで進めるのは簡単ではありません。専門人材が限られがちな中小企業であればなおさらです。

opsfieldは、中小企業のAXを業務設計の段階から伴走し、課題の整理から実行、定着までを一貫して支援します。何から始めればよいか迷ったときは、ぜひ一度opsfieldにご相談ください。

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